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百年、再生の我無し

40歳からの人生やり直し。

名前を騙られるということ(2)

ここまで読んでいろいろ疑問を感じる人もいるかもしれない。たとえば次のような。


「荒らしの正体がわかっているなら、そいつと直接コンタクトをとって、一体何が不満でこういうことをするのか、話し合えばいいんじゃないか。」

それは何度か試みた。が、ことごとく拒否された。というより、自分が「犯人」であることを頑として認めなかった、というほうが正確だった。
こちらとしても、そいつが犯人である、という確証がないのだ。(状況証拠は豊富にあったが)プロキシサーバ経由でのアクセスは無論のこと、それ以前の本当のプロバイダ経由でのアクセスにしても「同じアクセスポイントを使用している別人の仕業だ」と言い張られてしまえば、それを覆すのは難しい。

確証を得たければ、プロバイダに開示請求をして、当該人物のアクセスログを得るしかない。(掲示板荒らしをしたときのプロキシサーバへのアクセスが確認できれば、それが証拠となる。)ただ、プロバイダは一般人の任意の開示請求などにはまず応じてくれないだろうが。


「警察に相談すれば」

警視庁のハイテク犯罪対策総合センターというところに相談した。
よく言われるのは、この手のインターネット絡みの犯罪については大変腰が重い、ということで、それは確かに痛感した。
ただ、私が話した担当の方は、終始こちらの訴えには同情的で、いろいろとアドバイスはしてくれた。ただ、捜査してそいつの掲示板荒らしの証拠を突き止めるとか、そういう方向にはどうしても向かわなかった。どういう事情があるのかはわからない。


「いったんその掲示板を閉鎖した後、よそに移って、常連さんにのみ移転先のURLを教えればいいんじゃないか。」

それはまじめに考えた。が、実行には移せなかった。
その掲示板が純粋に自分の所有物であればとっくにそうしていただろう。が、その掲示板は、入院中の人物のもので、私はただ預かっているにすぎなかった。
入院中のその人に見舞いがてら聞いてみても「申し訳ないが、そこは譲りたくない。なんとか閉鎖しない方向で頑張ってほしい」みたいなことを言われたので、やはりそうするわけにはいかなった。非常につらいことだったが。


「一体何をすればそこまで恨まれるのか。よほどその人物に酷いことをしたのではないか。」

前の記事にも書いたが、数ヶ月前にその人物と感情的な行き違いが生じたことがあった。
どういうことだったかというと。

あるところで一緒に飲んでいたのだが、そのとき、話の中で何か納得いかないことがあって(何だったか忘れた)―――これは全く私の悪い癖なのだが―――激昂して怒鳴りつつ手に持っていたグラスを割れよとばかりにテーブルに叩きつけた、ということがあった。(過去に何度かそういうことがあって、その度に人を泣かせたり恐怖におびえさせたりした。)

思い当たるのはそのことくらいである。
確かに、これは私が悪い。悪いのだが、そうだとしても先方のやり口が卑怯だし、それに、やられたことと、それに対する報復が、著しくバランスを欠いている。
一発殴られて頭にきたので、そいつの家に火をつけた、とでもいうような…


ともかく、連日連夜、掲示板の荒らし投稿を削除しては、アクセス禁止リストに新しいプロキシサーバを追加し、ということを繰り返していた。寝不足と、そして精神的な打撃のせいで(いくら平気を装っても、こういうのは少しずつではあるが確実に精神を蝕む)、常に頭が重く、体のどこかしらが痛かった。

あるとき、数限りない猥褻コピペと誹謗中傷の中に、このような文句があった。


「おまえは地獄に堕ちるだろう。俺が落としてやる。」


それまでにも、掲示板荒らしには何度も遭遇した。私を標的にした誹謗中傷も数限りなく受けてきた。
ある時など「死ね!」と書いたメールが私のメールアドレス宛に1000通以上も送られてきたこともあった。その時も送信元のメールアドレスを送り主とは別のアドレスになりすまして送ってくる、という手法を使っていた。メールのヘッダーから本当の送り元を割り出し、本当の送り元であるプロバイダにお願いして、メールの送信あてに厳重に抗議してもらった、ということもあった。(その後、こなくなった。)

だから、この手の行為に対して恐ろしいと思ったことは無かった。
だが「お前は地獄に堕ちるだろう」という文言をみたとき、はじめて今まで感じたことのない恐怖を覚えた。
やはり、相当疲れていたのに違いない。


掲示板の運営会社に言っても改善はなされないようだし、もはや純粋にシステム的な手立てだけではダメなように思えた。
その人物と私の共通の知人がいるので、その人から和解をすすめてもらうようお願いすることにした。(ただし、私が頼んだことは内緒にして)一方で、私からその人物に対しては、「法的な措置」も検討していることを匂わせる。

それが奏功したのか、あるいは向こうも相当疲れていたのか、ある日を境にぷっつりと荒らし投稿が止んだ。
正直、安堵した。掲示板のことを気にせずゆっくりと寝られるということが、こんなにも有り難く幸せなこととは思わなかった。


また、平穏な日々に戻った、ように思われた。
(続く)