百年、再生の我無し

40歳からの人生やり直し。

書評

組織において自分を貫くには(書評:鈴木伸元「反骨の知将 帝国陸軍少将・小沼治夫」)

役所であれ、一般企業であれ、NPOであれ、およそあらゆる組織に生きる人間は、大日本帝国陸軍の歴史を学ぶべきだろう。帝国陸軍、特に昭和初期のそれは、「ダメな組織」が呈するあらゆる症状――大戦略の欠如、現実感覚の不全、合理的精神を欠いた精神論の跋扈…

もはや笑うことはできない(書評:渋谷直角「奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール」)

家の掃除をしていた時、自分が昔使っていたノートが見つかる、ということがある。そこにはいかにも若書きの生硬な文章とか詩とかイラストとかが書いてあって、赤面しつつそっと元の場所に戻す、ということがあると思う。渋谷直角「カフェでよくかかっているJ…

鬱勃たる青春の日々(書評:松本清張「半生の記」)

松本清張は数多くの作品を世に残したが、作家としてのデビューはわりと遅いほうで、41歳のときに処女作「西郷札」を発表した。それまではずっと、朝日新聞西部本社の広告デザイナーとして勤務していた。 本書「半生の記」は、その作家デビュー前までについて…

亡国の民に幸福はあり得るか(書評:古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち」)

ちょうど2年前に出て、話題になった本である。内容の概略や感想は様々な媒体ででていたので、なんとなくは知っていたが、今に至るまできちんと読んではいなかった。もともと「いま話題の」という言葉がつくとそれだけで拒否反応を示してしまう偏屈者なので…

親子は他人の始まり(書評:田房永子「母がしんどい」)

久しぶりのブログ更新である。 今日は、田房永子の「母がしんどい」を取り上げてみたい。 母がしんどい作者: 田房永子出版社/メーカー: 新人物往来社発売日: 2012/03/24メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 10人 クリック: 144回この商品を含むブログ (23…

今、そこにある地獄 (書評:信田さよ子「母が重くてたまらない」)

一年くらい前に読んだ本なのだが、思うところあって再読してみた。 再読してみて、改めて、「戦慄を覚える」という表現はこういうときに使うのだな、ということを再認識した。そういう本である。 母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き作者: 信田さよ子出版社/…

戦略は何に宿るのか(書評:奥山真司「世界を変えたいなら一度“武器”を捨ててしまおう」)

本書の著者である奥山真司は、カナダと英国で学び、戦略論(Strategic Studies)の博士号を取得し、現在は在野の地政学者・戦略学者として活動している。本書は、欧米の戦略論の知見を、戦略論の主対象となる国家や組織ではなく、個人に対して適用しようとい…

となりのレイシスト(書評:安田浩一「ネットと愛国」)

本書は、「在日特権を許さない市民の会」(略して在特会)の実情と、彼らが「台頭」してきた背景を、おもにその構成員への取材によって明らかにしたノンフィクションである。 ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)作者: 安田浩一出版社/メーカ…

少年から大人になるということ (書評:前川麻子「劇情コモンセンス」)

劇情コモンセンス作者: 前川麻子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/10/24メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (2件) を見る 少年少女のころに夢中になっていたものを、大きくなってから改めて見たときに「自分はこんなものに夢中になっ…